白雪姫 「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰……」 ピカピカに磨かれた鏡に向って、清四郎はガックリと項垂れた。 「なぜ、僕がこんな役を」 「仕方ないじゃない?あみだクジで決めたんだから」 可憐は持っていた斧を苛々と振り回した。 「あたしなんか、七人の小人役なのよ!あんたの方がよっぽどマシだわ」 「替わりましょうか?」 「替わって」 交渉成立……と思いきや、可憐の背後から一つの影がヌッと現れた。 「ずるいじゃないかぁ、可憐!」 「なによぉ、美童は小人やんなさいよ」 「ヤダ!僕だって、お后様の方がいいよ」 「うるさいわねえ。あたしがお后様をやるの」 「僕だ」 「あたしよ」 フンフンと、二人で張り合っていると、煌びやかなドレスを着た悠理が怖い顔をしてや ってきた。 「コラ!最初に決めた配役で、ちゃんとやれよ!」 「だって、何であたしが小人役なのよぉ。普通、白雪姫じゃないの〜」 「うるさい!公平にあみだで決めたんだから、文句言うな!」 偉そうな悠理を、可憐はじとー、と睨んだ。 「いいわよね、あんたは。なんたって、白雪姫なんだから」 そう!なんと、悠理が白雪姫という主役の座を射止めたのであった。 可憐の嫉妬の眼差しを受けながらも、悠理はふいっと目を逸らした。 「……あたしは、王子の方が良かった」 「ああ、王子ね……」 可憐と悠理は同じ方向に視線を定めた。そこには、重たそうな剣を持って、よろめい ている王子が一人……。 「お、重いですわ」 ふらふらと野梨子は持っていた剣をガシャンと床に置いた。はあはあと息を乱してい る隣には、魅録が心配そうに寄り添っている。彼は猟師役である。 「大丈夫か、野梨子」 「え、ええ」 「やっぱり、王子の役は誰かに替わってもらったほうが良くないか」 そう魅録が言った瞬間、美童の目がキラリンと光った。ササササッ!と二人に歩み寄っ てくる。 「そうだよ、そうだよ!野梨子に王子様の役は無理さ!ここは僕が一つ」 「いえ!私、やり遂げますわ!」 「野梨子……分かったよ。俺、精一杯フォローしてやるから!」 「ありがとう、魅録……」 いきなり二人の世界に突入する彼らの横で、美童はがっくりと肩を落とした。 なぜここで終わっているのかというと、単に白雪姫の話がよく思い出せなかったから。 ダメじゃん! それにしても、彼らは何故、こんな劇をやろうとしているのでしょうか……謎。 BACK |