情事の後で



 シティホテルの一室で激しく愛し合ったあと、悠理はぼんやりと天井を見ていた。
 気だるい空気が、汗ばんだ肌に気持ち良い。
 腕枕をしてくれている清四郎の小指を甘噛みしながら、思うことはただ一つ。

(……吉兆の弁当が食いたい……)

 思わずガリと歯に力を込めてしまった。
「いてえ!」
 相当痛かったのか、らしくない悲鳴を清四郎は上げた。
 悠理から剥がした小指を、すかさず口に含んでいる。色っぽくなりそうなシチュエー
ションだが、ちっとも色っぽくない。血が出たので、唾をつけただけだ。
「ひどいじゃないですか。あーイタ……」 
「ごめーん、清四郎の指、エビフライと間違えちゃったよ」てへ♪
「一体、どういう思考をしてるんだ、おまえは!アホ、バカ、この食欲の権化め!!」
 ひとしきり罵ると、清四郎はすっきりと気持ちが落ち着いた。(←酷いヤツ)
 だが、反対に悠理は涙目になっている。
「ひ、ひどいよ、清四郎……。そんなにバカバカ言わなくたっていいじゃん!」
「だって、バカでしょう」
 当〜然!と、清四郎は悠理を横目で見た。その冷たい視線に、悠理の胸がキュンと
高鳴る。何故でしょう。Mだから。
「……イジワルぅ……」
「誰が意地悪ですって?こんなに優しくしてあげてるじゃないですか……」 
 そう言いつつ、清四郎は悠理の敏感な部分に指を這わした。Sだから。
「あ、いや…っ」
「ここは喜んでる……」
「もうっ、バカぁ」
 照れ隠しのつもりなのか、悠理の鋭いビンタが飛んできて、清四郎は素早く体を離し
た。
「あ、危ないじゃないか!!」
「なんだよ、冗談だってば」
「おまえのは洒落にならないんだー!」
 さすがの清四郎も、悠理の平手打ちは堪えるらしかった。




 
 

なんじゃ、これ。



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